相続放棄の熟慮期間は伸長できる
熟慮期間「3ヶ月」は厳しい……
相続人は、相続が開始したら、相続放棄するかどうか決めなければいけません。この決断は原則として覆すことができないため、相続放棄の申述は、どのような遺産、債務があるかの調査を経て慎重になされることになります。しかし、いくら慎重に決断することが求められるとしても、長い間相続放棄するかどうか気なければ権利関係が不安定となってしまうため、相続放棄には、一定の「期間制限」があります。
相続放棄するかどうか決める期間のことを「熟慮期間」といい、この期間内に相続の限定承認または放棄をしない場合には、その相続人は単純承認、つまり被相続人の一切の権利義務を承継することを承認したとみなされます。
問題なのは、熟慮期間はたったの3ヶ月しかないということ。3ヶ月以内に相続財産を調査して、相続放棄するかどうか決めなければいけないのは、場合によっては酷だといえるでしょう。
熟慮期間の伸長
権利関係が複雑であったり、財産が膨大だったりする場合は、相続人を含む利害関係人または検察官の請求により、家庭裁判所の審判で熟慮期間を伸長することができます(民法915条1項ただし書)。この審判が却下された場合には、即時抗告して争うことも可能です。この審判において考慮されるのは、「相続財産がどの程度あるか、どの程度複雑か、所在地、遺産の額、相続人が調査を円滑に遂行できない理由」などと考えられています。つまり、相続財産の調査が大変なときに、熟慮期間の伸長は認められるといえるのです。
さらに、裁判例(大阪高決昭50.6.25家月28巻8号49頁)では、「相続財産の積極・消極財産の存在、限定承認するについての共同相続人全員の協議期間ならびに財産目録の調製期間などを考慮して審理するを要するものと解するのが相当である」として、考慮する要素を拡張するものも存在します。
いずれにしても、熟慮期間を伸ばしてもらうためには、それが正当だと思われる事情が必要になるのです。
熟慮期間の伸長は「いつまで」申し立てられるのか
熟慮期間伸長の審判の申し立ては、熟慮期間中(つまり3ヶ月の間)になされる必要があります。熟慮期間を過ぎてしまうと、自動的にすべてを相続する「単純承認」になるため注意しなければいけません。札幌で相続放棄の相談を受けている際に、熟慮期間が経過するギリギリになって「熟慮期間を伸長して欲しい」と言われることがあります。熟慮期間の伸長はいつまででもできるわけではありませんので、時間に余裕を持ってご相談にいらしてください。
札幌市中央区の司法書士平成事務所の実績
札幌市中央区にございます当事務所では、熟慮期間の伸長サポートをした事例がいくつもございます。これまでの事例を見ていると、事情が事情であれば、おおむね3ヶ月程度の伸長であれば認められております。