札幌市中央区のXさんが死亡し、相続人は息子のYです。Xの他の親族といえば、Xさんの弟Zが豊平区に住んでいる状況です。このとき、息子のYが相続放棄をしたら、これで「終わり」にしてよいのでしょうか?
実は、息子Yが相続放棄をしたら、めぐりめぐって弟Zが相続人になることがあるのです。順を追って説明しましょう。
相続が起こったとき、単純承認・限定承認・相続放棄の3つのなかから相続の仕方を選択することになりますが、全員で手続きをする必要があるのは、限定承認のみです。下記にある、民法923条に相当する規定が相続放棄には存在しないのです。
したがって相続放棄は、各相続人の事情によって、それぞれが好きにできることになります。相続人が3人いたとして、そのうちの1名のみが相続放棄をすることもできるし、3名全員が相続放棄をすることも可能なのです。
もちろん現実の話として、被相続人と相続人が「家族ではなくなる」わけではありません。法律の話として、相続人がその地位を喪失するという意味です。
これを理解するためには、「法定相続人」についての知識が必須になります(当サイトで法定相続人について解説をしたのは、「相続放棄をできるのは誰?」という記事ですので、よろしければご参照ください)。
簡単におさらいすると、法定相続人には配偶者相続人と血族相続人がいます。その血族相続人には順位があって、第一順位(子)がいれば第一順位の者が相続人になります。第一順位がいなければ第二順位(直系尊属)が相続人に、第一順位と第二順位の者がいなければ第三順位(兄弟姉妹)の者が相続人になるのです。
では、第一順位の者である子全員が、相続放棄をしたらどうなるのでしょうか。相続放棄の効果は「初めから相続人ではなかった」という効果ですから、第一順位の相続人は存在しないことになります。すると、第二順位の者が相続人になることがあります。第二順位の者も相続放棄をすると、第二順位の者も「初めから相続人ではなかった」ことになり、第三順位の者が相続人になるのです。
被相続人であるXさんが死亡して、息子であるYさんが相続人である事例に戻りましょう。Yさんが相続放棄をしたら、第一順位の相続人はいなくなります。そして第一順位の相続人がいなくなれば、第二順位の者が相続人になりますが、本件においてはXさんの直系尊属は既にいませんでした。したがって第一順位・第二順位の相続人がそれぞれいないことになり、第三順位であったXさんの弟Wが相続人になるのです。
借金ばかりを相続する場面であれば、相続放棄は「家族みんなで」することを検討しましょう。第一順位の者が相続放棄したら、第二順位・第三順位の者が相続人になってしまうため、第二・第三順位の者も、相続放棄をしてしまうのです。
このように、ある方の相続放棄が終わればそれでよいわけではなくて、手続きをした後、別の相続人に相続放棄の必要性が生じることがあるのです。「家族のなかから」適切に借金の相続をなくすためには、相続人の確定作業から慎重に行う必要があるのです。
実は、息子Yが相続放棄をしたら、めぐりめぐって弟Zが相続人になることがあるのです。順を追って説明しましょう。
相続放棄は「一人」でできる
相続放棄は家庭裁判所で申述(簡単にいうと申立ての手続き)をしなければいけませんが、この手続きは「相続人が揃ってしなければいけない」という規定はありません。相続が起こったとき、単純承認・限定承認・相続放棄の3つのなかから相続の仕方を選択することになりますが、全員で手続きをする必要があるのは、限定承認のみです。下記にある、民法923条に相当する規定が相続放棄には存在しないのです。
民法第923条 相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。
したがって相続放棄は、各相続人の事情によって、それぞれが好きにできることになります。相続人が3人いたとして、そのうちの1名のみが相続放棄をすることもできるし、3名全員が相続放棄をすることも可能なのです。
相続放棄の効果は「初めから相続人でなかったことになる」
相続人である息子のYさんが相続放棄をしたら、Yさんは初めから相続人でなかったことになります。民法では、次のように規定されているのです。民法第939条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
もちろん現実の話として、被相続人と相続人が「家族ではなくなる」わけではありません。法律の話として、相続人がその地位を喪失するという意味です。
借金の相続は、めぐりめぐって他の相続人に……
ここからが重要なところです。結論を述べると、相続放棄をしたら、相続人でなかった者が相続人の地位を得ることがあるのです。これを理解するためには、「法定相続人」についての知識が必須になります(当サイトで法定相続人について解説をしたのは、「相続放棄をできるのは誰?」という記事ですので、よろしければご参照ください)。
簡単におさらいすると、法定相続人には配偶者相続人と血族相続人がいます。その血族相続人には順位があって、第一順位(子)がいれば第一順位の者が相続人になります。第一順位がいなければ第二順位(直系尊属)が相続人に、第一順位と第二順位の者がいなければ第三順位(兄弟姉妹)の者が相続人になるのです。
では、第一順位の者である子全員が、相続放棄をしたらどうなるのでしょうか。相続放棄の効果は「初めから相続人ではなかった」という効果ですから、第一順位の相続人は存在しないことになります。すると、第二順位の者が相続人になることがあります。第二順位の者も相続放棄をすると、第二順位の者も「初めから相続人ではなかった」ことになり、第三順位の者が相続人になるのです。
被相続人であるXさんが死亡して、息子であるYさんが相続人である事例に戻りましょう。Yさんが相続放棄をしたら、第一順位の相続人はいなくなります。そして第一順位の相続人がいなくなれば、第二順位の者が相続人になりますが、本件においてはXさんの直系尊属は既にいませんでした。したがって第一順位・第二順位の相続人がそれぞれいないことになり、第三順位であったXさんの弟Wが相続人になるのです。
借金ばかりなら、相続放棄は「家族みんなで」
相続人のうちの誰かが相続放棄をしても、代わりに別の相続人が相続をします。これでは借金の相続を回避するために行った相続放棄でしたが、借金は別の親族にうつるだけで、家族のなかから完全に借金を消し去ることができません。借金ばかりを相続する場面であれば、相続放棄は「家族みんなで」することを検討しましょう。第一順位の者が相続放棄したら、第二順位・第三順位の者が相続人になってしまうため、第二・第三順位の者も、相続放棄をしてしまうのです。
このように、ある方の相続放棄が終わればそれでよいわけではなくて、手続きをした後、別の相続人に相続放棄の必要性が生じることがあるのです。「家族のなかから」適切に借金の相続をなくすためには、相続人の確定作業から慎重に行う必要があるのです。